【考察】三角形の合同条件と合同の定義は同値なのか?証明してみた
中学数学では三角形の3つの合同条件というものを習いますよね。しかし、習った当時はひたすらに覚えろと言われ、理解せずにただ覚えた人が大半なのではないでしょうか。そこで今回は、改めて三角形の合同条件について考えてみようと思います。中学校はとっくの昔に卒業した大人の方でも、数学好きの中学生の方でもわかるように書いていきます!
(ここで使う数学の知識は別記事で補完することも考えています。)
目次
1.三角形の合同条件
まずは、合同条件を3つ列挙してみます。知っている人は読み飛ばしてもokです!
以下の3つの条件のうちいずれかが満たされるとき、2つの三角形は合同となる。
①3組の辺がそれぞれ等しい。
②2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい。
③1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい。
2.合同の定義
上に挙げた3つの合同条件は、実は合同の定義そのものではありません。
それでは、合同の定義と合同条件はそれぞれ何なのでしょうか。
ではまず、合同の定義を見ていきましょう!
定義(三角形の合同)
2つの三角形に対して、片方の三角形を適当に平行移動,回転移動,対称移動させると、他方の三角形に重なるとき、その2つの三角形は合同であるという。
対称移動とは、ざっくり言うと図形を裏返すことです。
合同の定義を簡単に言えば、片方の三角形を形を変えずに移動させて、他方の三角形に重ねられるなら、2つの三角形は合同である、ということです。
例えば、下図の△ABCと△A'B'C'と△A''B''C''は平行移動と回転移動で重ねることができるので、△ABCと△A'B'C'と△A''B''C''は合同であり、△ABC ≡ △A'B'C' ≡ △A''B''C'' と書けます。
これを言い換えると、2つの三角形のすべての辺と角が等しければ合同である、となるでしょう。なぜなら、移動して重なるならばすべての辺と角は等しいし、その逆も成り立つからです。(※1)
POINT!
2つの三角形が合同 ⇔ 2つの三角形の辺と角がすべて等しい
("⇔"とは、前後が同値、つまり言い換えになっているという意味です。)
3.何を証明するのか?
上に述べた、"辺と角がすべて等しい"という条件はもっとスマートにすることができます。実はそれが、最初に紹介した3つの合同条件なのです!
したがって、
辺と角がすべて等しい ー(*) ⇔ 3組の辺がすべて等しい ー①
⇔ 2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい ー②
⇔ 1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい ー③
ということを証明すれば、合同条件と三角形の合同の定義は同値であることが言えます。
4.証明
まずは証明の流れをざっと見ていきます。もし普通に証明するなら、 (*)⇒①,②,③は自明なので、①⇒(*) , ②⇒(*) , ③⇒(*) の3つを証明することになります。
しかし、この3つを証明するのは少し大変です。そこで、(*)⇔①を示してから、②⇒①と③⇒①を証明することにします。なぜこれだけで十分なのか説明しましょう。(*)⇔①示すと、(*)⇒②,③は自明なので、①(⇔(*))⇒②と①(⇔(*))⇒③が言えます。したがって、さらに②⇒①と③⇒①を証明すれば、(*)⇔①⇔②⇔③が示されたことになるということです。
POINT!
(*) ⇔ ① と ② ⇒ ① と ③ ⇒ ① を示せば十分!
ここで悲しいお知らせですが、私の能力では三角比を使う方法しか思いつきません。ここで使う知識は別記事にて補完する予定ですが、三角比を知らないという方は最後の考察と感想だけでも読んでもらえると嬉しいです!
さて、それでは証明に取り掛かっていきましょう!
(1)(*) ⇔ ① を示す
角と辺の情報を結ぶために、余弦定理を用いて示します!
(*) ⇒ ① は自明なので、以下① ⇒ (*) を示す。
上図のように辺の長さをおくと、余弦定理より、
なので、 を得る。
も同様に示せる。
よって、① ⇒ (*)が成り立つ。
(2)② ⇒ ① を示す。
残りの1組の辺が等しいことを示せばよいですね! 余弦定理を使います。
上図のように辺の長さをとおくと、余弦定理より、
なので、 を得る。
よって、② ⇒ ① が成り立つ。
(3)③ ⇒ ① を示す。
残り2組の辺が等しいことを示せばよいですね!正弦定理と余弦定理を使います。
上図のように辺の長さをおく。正弦定理より、
( より、であることを用いた。)
また、余弦定理より、
なので、 となる。
よって、③ ⇒ ① が示された。
以上より、合同の定義と3つの合同条件はすべて同値である。
5.考察と感想
さて、やっと証明を終えることができましたね。ここまで長い道のりだった…。
しかし、私は若干納得がいっていません。三角形の合同は中学数学の範囲なのに、今まで追ってきた証明はゴリゴリに高校数学を用いているではありませんか。これだと、中学数学は直観に頼った算数に過ぎないことになってしまうと思うのです。もし、中学数学の範囲で証明できる方がいれば、ぜひコメントをお願いします。
最後になりますが、本記事のように、発展した数学を学んだあとで以前の数学を再考してみると、なかなか面白い発見があったりします。ぜひ、皆さんも中学数学や高校数学を思い出して、深く考えてみてください。きっと楽しい数学の世界が待っていますよ!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!